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【すぐ使える】考察の書き方 論文・レポートの評価を高める5つのポイント

「先生からのフィードバックで『考察が浅い』と言われた。どうすれば深い考察が書ける?」

「考察に自分の主観が強く出過ぎてしまう気がする。もっと客観的に構成・展開するにはどうすればいい?」

論文やレポートの執筆に悩む人へ、「考察」の書き方についての情報をまとめました。重要性や定義を再確認するほか、データの分析方法とそれを読み解くパターンの具体例などを解説します。最後にある「よくある致命的な間違い」もぜひチェックしてください。

▼この記事はこんな人におすすめ

・考察を導くための具体的なステップやフレームを探している

・考察を書いてみたが、まだ物足りなさや説得力不足を感じる

1. 論文における「考察」の重要性

まずは論文の中で考察が果たす役割やその重要性を認識しておきましょう。

1-1.論文の中での考察の位置づけ

論文における「考察」の章は、研究の核心をなす重要な部分です。ここでは実験や調査から得られたデータを徹底的に分析し、その意味や影響を探ります。

考察は単なるデータの羅列ではなく、「それらがどのように研究の仮説や問いに答えるか」を論じなければなりません。

1-2.考察が論文全体に与える影響

「考察」は論文の全体的な説得力を大きく左右します。考察としてまとめた分析・解釈は、研究の結果を表すだけでなく、研究そのものの重要性や信頼性を強調する役割を果たします。

考察が不十分な論文は、結果の意味や重要性が不明確であると評価され、研究の信頼性や影響力が低下するでしょう。批判的なレビューを受ける可能性も高まります。

2. 「考察」とは何か?

続いては「考察」の定義や近年のトレンドから、考察とは何かを再確認します。

2-1.考察の定義

まずは辞書ではどう定義されているのか、以下の引用から改めて確認してください。

なお英語論文では考察の部分を「Discussion」と表記します。日本語では「議論・討論・論議」の意味がよく知られていますが、論文では「論考」や「詳解」といった訳語をあてることもあります。

2-2.論文タイトルに「考察」を入れることの是非

ちなみに論文やレポートで「〇〇に関する考察」「〇〇についての一考察」というタイトルを付けることには賛否両論あることを念頭に置いてください。

タイトルに「考察」を含めることで、「論文が特定のトピックや問題に対する深い分析や解釈に焦点を当てていることを明示できる」という意見の一方、「そもそも論文では考察が重要な部分であることは自明の理であるため、タイトルにわざわざ言葉を加えることで冗長に感じられ、価値が下がる」と見なす意見もあります。

2-2.一般向け考察ブログやコンテンツのトレンド

学術論文以外にも「考察」はよく使われます。特にWeb上には、映画やドラマ、漫画・アニメなどの人気作品に関する「考察ブログ」や「考察動画」が少なくありません。

これらは同じ「考察」というキーワードの元に展開されますが、そもそも発表の目的や想定読者が異なります。学術論文は社会的な問題提起や解決、技術進展につながるもの。個人の興味や課題解決にする文章とは切り分けて考えましょう。

したがって他のコンテンツの考察ノウハウを、レポートや論文にそのまま応用しないようにしてください。特に作品研究に取り組む人は注意が必要です。

3. 論文における考察の目的と、達成のための「4つの問い」

続いては考察の目的とともに、目的達成のため意識すべき4つの「問い」を紹介します。

3-1.研究結果の意味づけ

考察の最も重要な目的の一つは「研究結果に意味を与えること」です。「集めたデータが何を示しているのか、それらが学術的または実践的にどのような意義を持つのか」を解析しなければなりません。

これには、例えば以下のような問いが有効です。

「データの背後には何らかのパターンが存在しないか?」

「データのパターンは既存の理論や他の研究とどう関連するのか?」

3-2.新たな視点の提供

論文の考察におけるもう1つの重要な目的は「新たな視点の提供」です。先述の問いから得られた気づきや洞察を、以下のポイントに照らしてさらに深掘りしてみてください。

「従来の学説や研究に、どのように挑戦するか?」

「従来の学説や研究を、どのように拡張するか?

このプロセスを経ることで、研究は単に事実を伝えるるだけでなく、未来に対する新たな方向性を提示します。

4.考察を書く前に よくあるデータ分析法とその解釈

ここでは、考察の書く前に行うデータの分析法についても説明します。

4-1.結果の分析と解釈

論文における「考察」の第一歩は、結果の分析と解釈から始まります。収集したデータを詳細に分析し、それが示す具体的な意味を探るのです。

データを確認する段階で、期待と異なる結果が得られたり、想定外の発見があるかも知れません。しかしまず、あくまでも研究の目的や仮説に沿って解釈できないか、あらゆる方向からアプローチするのが肝要です。

4-2.よく用いられる分析手法

調査や研究結果の分析には、以下のような手法があります。

統計的分析:データセットに対して、統計的手法(平均、標準偏差、回帰分析等)を適用し、傾向や関連性を明らかにする。

比較分析:異なるグループや条件下でのデータを比較し、顕著な違いや共通点を特定する。

時系列分析:データが時間とともにどのように変化するかを分析し、トレンドや周期性を探る。

因果関係の探求:相関関係が見られるデータ同士で、因果関係が存在するかどうかを検討する。

質的データの分析:数値データだけでなく、ヒアリングやアンケートなどの質的データを分析し、テーマやパターンを抽出する。

5.深い考察のための5つのポイント

ここからは、具体的にはどのように考察を進めていけば良いかについて説明します。

5-1.データと理論の結びつけ

まずは、収集したデータを既存の理論やモデルと関連付けることを試みます。関連付けには、例えば以下のようなパターンが挙げられます。

理論の補強:研究結果が既存の理論を証明・支持し、その妥当性をさらに強化する。

新たな視点の提供:既存の理論にはない新しい視点や側面をプラスする。

矛盾の指摘:既存の理論の矛盾点を示す。

代替理論の提案:研究結果が既存の理論を否定する(新たな理論やモデルの提案を促す)。

理論間の橋渡し: 2つ以上の異なる理論やモデル間の関連性を補完し、それらをつなぐ新しい枠組みを提案する。

5-2.仮説の検証

次は仮説検証です。研究の出発点となった仮説が、収集したデータによってどの程度支持されるかを評価してみてください。

仮説と結果の一致度合いや相違点を慎重に検討し、必要に応じて仮説を修正したり、新たな仮説を提案したりします。

このプロセスを通じて、客観性と論理性を保ち、研究の信頼性と学術的貢献を高めます。

5-3.結果の多角的解釈

続いて研究結果を異なる視点からも考察し、多様な解釈を探求してみます。このアプローチにより、単一の視点では見落とされがちな発見や気づきを得ます。

例えば、経済学における経済現象にまつわるデータを、政治学的視点、社会心理学的視点、人口統計学的視点などから眺めてみてください。調査の意義が、別の角度から明らかになることもあります。

同様に、生物学的データに環境科学の視点、機械の性能データに材料科学の視点など、可能性を閉じずにあらゆる角度からの解釈を試みてみましょう。

5-4.研究の限界とその影響

取り組んできた研究の限界についてしっかり認識し、正しく記録することも重要です。

研究方法の選択、データ収集の範囲や抽出方法、サンプルサイズの上限など、さまざまな前提条件が結果にバイアスをもたらしている可能性は否めません。限界の明示によって、読む人に対し、研究結果を正しく理解するための注意点を説明します。

5-5.未解決問題への提案

考察の中には、未解決問題への提案を盛り込んでおきましょう。さらなる調査や分析の必要性を指摘することで、学術分野の進展に貢献します。

一例として、特定の条件下でのみ観察された現象や、予期しない結果が生じた場合、それらがなぜ起こったのか、どのような要因が関与しているのかを探る必要性を示唆します。

「〇〇〇〇については、別の機会による究明を期待したい。」というような表現で、未来の研究へとつなげます。

6.考察によくある「致命的な間違い」5選

最後に、考察を進める上でよく発生する致命的な間違いを5つ紹介しましょう。チェックリストとして活用してください。

6-1.主観的な意見と客観的な分析の混同

仮説や意見につなげたい気持ちが強いあまり、その研究トピックにとって都合の良いデータだけを集めたり、提示したりしないように注意が必要です。

6-2.データの誤解釈

調査後のデータの集計もれや読み違いがないかだけでなく、調査や実験項目の設計時に必要要素の取りこぼしがないかなどを、できるだけチェックしてください。

6-3.過度な推測と仮定

科学的な根拠が不足している主張は「推測」です。考察はあくまでも研究結果データと既存の理論から形成されるものです。過度な推測と仮定は、研究全体の信頼性を損ねます。

6-4.研究の限界の過小評価

研究の限界を過小評価してはいけません。研究を未来につなげるため、必ず正確に記録しておくようにしましょう。

6-5.曖昧な表現の使用

考察は明確かつ具体的に、誤解を生まない表現で記述しましょう。曖昧な表現を用いると主旨が不明瞭になり、説得力がなくなります。

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