「J-STAGEに論文を掲載したいけど、XMLファイルの作成方法がわからない」
「XMLファイルの準備が大変そう。スムーズにできる方法は?」
論文公開にあたりそうした課題に直面している人へ、この記事では、J-STAGEへの登載に不可欠なXMLファイルについて解説します。掲載までの流れやXMLの基礎知識のほか、XMLデータの準備方法や、効率的に進めるためのコツをわかりやすく解説します。
▼この記事はこんな人におすすめ
- J-STAGEが推奨するXMLについて、基礎から知りたい
- 論文を初めてJ-STAGEへ掲載したいが、やり方に不安や疑問がある
※本文中の説明はすべて2024年3月現在の情報に基づきます。機能・画面仕様などは最新情報とは異なる可能性があります。正しい情報は必ずJ-STAGEのサイトで確認してください。
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1. J-STAGEで論文を公開するまでの流れ
まずはJ-STAGEで論文を公開するまでの流れについて確認します。
1-1.J-STAGEでの論文掲載までのフロー
J-STAGEでの論文掲載までのフローは以下の通りです。
まずは論文の原稿を学会事務局(もしくは「編集委員」など、呼び方はジャーナルによって異なる)の定める形式に整え、提出します。査読や審査の結果採録となった場合、原稿に修正等を加えて、最終稿が確定します。
その後は多くの場合、印刷会社による製版作業などを経て、J-STAGEで論文が公開されます。公開後は必要に応じて事務局から掲載証明書が送付されることがあります。
1-2.公開方法にはXML・Webの2種類がある
J-STAGEでの論文公開には「XML」と「Web」という2種類の方式があります。
XML方式はさらに「書誌情報のみXML」「論文全文XML」の2パターンに分類されます。前者は書誌情報の部分のみ、後者は論文全体をXMLファイルとして準備し、J-STAGEへデータを提出します。
一方Web方式は、HTML形式で論文を直接Web上に公開します。必要となるのは論文のPDFファイルのみなので、申請作業におけるXML作成作業は省けます。
1-3.J-STAGEが推奨する「全文XML形式」とは
先に述べた通りXML方式には2パターンあり、J-STAGEではこのうち「論文全文XML」を推奨しています。
論文全文XMLとは「論文のデータ全体を構造化・標準化したもの」で、この形式を適用した論文は、タイトル、著者、抄録、本文、参考文献などのパートが詳細かつ明確にタグ付けされた上でJ-STAGEへ登録されます。
すなわちXML化することで、情報を探している他の研究者にとっても目に留まり、活用されやすい論文データとなるのです。本文を読むだけであれば一見Web公開と差がありません。しかし多くのユーザーにとって、検索精度がアップしたり、引用文献へのリンクが自動生成できたりするなど、Web公開版よりも付加価値の高い論文となります。
2. そもそもXMLとは
ところでそもそも「XML」とは何なのでしょうか。基本的な知識を確認しておきましょう。
2-1.XMLが可能にすること
XMLは「Extensible Markup Language」の略称で、文書の意味づけをする「マークアップ言語」の一種です。マークアップ言語には、他にHTMLやCSSなどがあります。
XMLはデータを構造化して保存・交換するためのフォーマットで、これを適用すると異なる複数のコンピューターシステムの間でも、情報を簡単に共有できるようになります。
また人間にも読みやすい形式であるためエラーの発見や修正がしやすく、ITの専門知識がない人でも比較的扱いやすい点が魅力です。
2-2.論文公開以外でXMLを利用するサービスやシーンの事例
XMLは論文公開以外でも様々な場面で利用されています。
身近な例としてはニュースサイトや天気予報が挙げられます。XMLは記事や写真、動画などの各要素に、それぞれ一定のルールを設けます。するとコンピュータが処理しやすくなり、速やかな配信・デバイスに応じた最適なスタイルでの表示などを可能にします。
オンラインショッピングサービスにも欠かせません。商品データをXMLで構造化すると、ユーザーが検索しやすくなるほか、商品比較サイトへの情報提供もしやすくなります。在庫管理や決済システムとのデータ連携円滑化にも役立っています。
そのほか、政府が公開する統計データや金融機関の顧客情報なども、XMLを用いて二次利用が促進されています。
すでに生活に密接に関わっているXML。今後もその重要性が高まっていくでしょう。
2-3.XMLのデメリット
しかしながらXMLには以下のようなデメリットもあります。
- 作成に手間とコストがかかる
- XMLの構文ルールを完全に守らないと正常に動作しない可能性がある
プログラミング言語に比較すると読みやすいとはいえ、スムーズに使いこなすには相応の知識が必要です。例えば専門的な人材不在の中小企業で、自社製品カタログをXMLで構築するのは、手間やコストの面から、現実的には困難かもしれません。
2-4.研究者なら知っておきたい「JATS」とは
研究成果を初めて公開するのであれば「JATS」という言葉も覚えておきましょう。
JATS(Journal Article Tag Suite)は、学術論文をデジタル形式で公開する際によく使用される、XMLベースの標準フォーマットです。世界中の数多くの学術雑誌や学会誌のほか、J-SATGEもこれを採用しています。
JATSは「見出し、本文、図表、数式、引用文献などの論文要素に対して、どのようなXMLタグを付与するか」を定めています。JATSに準拠してXMLを作成すれば、国内外で論文の相互運用性が高まります。
3. J-STAGE掲載用XMLデータの準備方法
続いては、J-STAGE掲載用XMLデータ準備のための具体的なプロセスや方法について解説します。
3-1.おおまかな作成フロー
ここでは全文XMLを例に取り上げましょう。
まず初めに、論文の全文をXMLフォーマットに従って正確に構造化する必要があります。
論文のタイトルや著者情報などの各セクションを、適切なXMLタグでマークアップする作業です。
マークアップ後、XMLファイルの検証を行い、エラーがないことを確認します。
最終的なXMLファイルをJ-STAGEの提出システムを通じてアップロードすると、論文の公開申請手続きは完了です。
3-2.「書誌XML」と「全文XML」の作成ツール活用
J-STAGEでは「書誌XML」と「全文XML」に対し、それぞれツールを用意しています。
「書誌XMLツール」では、書誌情報のみをXMLデータ化できます。操作は比較的簡単で、基本レイアウトを決めてテンプレートとして登録し、それに沿って作成したPDFファイルをアップロードするだけで書誌情報が生成されます。
一方「全文XMLツール」は、WordまたはLaTeX形式のファイルをベースに、見出しや段落、図表、数式、引用文献などに対して適切なXMLタグを付与する必要があります。テンプレートの利用も可能ですが、いずれにせよそれなりに専門的な知識とスキルが求められます。
なおJ-STAGEは全文XMLを推奨しているため、「書誌XMLツールは2025年3月中でサービス終了する」旨が公式サイトにてアナウンスされています。注意してください。
3-3.XML作成手順・マニュアル
J-STAGE掲載用のXMLデータの作成手順やマニュアルについては、公式サイトの「登載ガイドライン・マニュアル」内にある「XMLフォーマットガイドライン」を参照してください(日本語版はこちら)。
このページには、XML化の概要、具体的な作業手順、サンプルデータなどが掲載されています。
4. J-STAGEでの論文公開を効率化するためのコツ
最後に、J-STAGEでの論文公開を効率化するためのコツを2つ紹介しましょう。
4-1.必要な準備や審査基準について、事前にしっかり確認する
J-STAGEでの論文公開をスムーズに進めるために、まずは準備や審査基準を事前にしっかりと確認しましょう。
投稿先のジャーナルの規定を詳しく読み込み、書類やデータフォーマットを把握するほか、審査プロセスに関する情報も収集しておくと良いでしょう。学会やジャーナルの公式サイトでも最新情報をチェックしておいてください。
またJ-STAGEへの論文登載の基礎知識は、本ブログのこちらの記事でも詳しく解説しています。
【J-STAGE掲載】論文の価値を上げる! 登載プロセスから助成金獲得への活用法まで
4-2.専門業者の利用を検討する
J-STAGEへの論文公開作業は、自力で行うと相当な手間と時間がかかります。特にXMLデータの作成は、XMLの構文やルールを理解する高度な専門知識が求められます。
その点で専門業者に作業を委託すると効率的です。また学会誌や学術雑誌の印刷時に、J-STAGEへの申請手続きまで一括で依頼している団体や機関も少なくありません。
外注する場合の唯一にして最大のデメリットは「料金が発生する」こと。しかしながら、研究者自身のリソースやコストを考えると、むしろ費用対効果が高い選択肢となる可能性もあります。
まとめ:XMLは論文や研究成果の普及への第一歩
J-STAGEも推奨している論文のXML化は、研究成果の可視化と活用を促進する重要なプロセスであることを解説しました。
自分が書き上げる論文や研究結果は、単に「たくさん読まれる」だけではなく、同じテーマの研究者や後輩世代の学生たちの道しるべとなることに価値があります。XMLは研究成果を世界に広く届ける第一歩です。
研究者一人ひとりがアウトプットの形を革新すると、デジタルとの相乗効果で学問の発展や深化が飛躍的にスピードアップします。研究を通じたより良い社会の実現にアプローチしやすくなるでしょう。
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