学会誌・学術誌の購読は研究者にとって欠かせない習慣です。近年は電子ジャーナル化が進み、そうした資料の多くがWeb公開されるようになりました。この記事では、学会誌のWeb閲覧に関する全般的な知識から検索の4つの方法、さらにWeb化されていない場合などにリアルで入手する手段までを取り上げています。文献探索や研究深化の手引きとして活用してください。
▼この記事はこんな人におすすめ
- 学会誌・学術誌から専門分野の知見を効率的に収集したい人
- Webを通じて自身の研究成果を広く発信したい人
▼ J-STAGEのメリットについて、詳しく知りたい方はこちら ▼
1. 学会誌・学術誌のWeb閲覧の基本
まずは学会誌をWebで閲覧する際に知っておきたい基礎事項をまとめました。
1-1.学会誌をWebで閲覧するメリット
学会誌をWebで閲覧するメリットは多岐にわたります。
まず印刷された学会誌の閲覧と比較して、まず発行されるたびに購入する必要がなく、経済的なコストを抑えられる点が挙げられます。また入手や閲覧に必要な労力や時間も削減でき、保管にあたって書庫にスペースを確保する必要もありません。
加えて検索機能が充実しているので、探している論文に素早くアクセスできるでしょう。バックナンバーの管理も容易になります。
これらを総合して「いつでもどこからでも必要な文献が読める利便性、研究の効率化」が、学会誌のWeb閲覧の最大のメリットといえます。
1-2.印刷した学会誌と電子ジャーナルとの比較
従来の印刷した学会誌と、Web閲覧できるデジタル版(電子ジャーナル)とでは、大きな違いがあります。
デジタル版はテキストがデータ化されているため、キーワード検索が可能です。保存や管理においても、印刷物に比べると格段に手軽になります。
一方、印刷版には印刷物ならではの価値もあります。
例えば図書館などの書棚に並べられたものから、研究のインスピレーションを偶然得ることもあるでしょう。また学会誌の読者の中には、研究空間での物理的な可視性や扱いやすさ、保存性などを求める層も一定数います。
いずれも一長一短があるため、用途に応じて使い分けるのがおすすめです。
2. 学会誌・学術誌の効率的な検索方法4選
つづいては学会誌を効率的に検索する4つの方法を説明しましょう。
2-1.図書館データベース(国立国会図書館や大学図書館など)
まずは図書館のデータベースを利用する方法があります。信頼性が高く、非常に便利です。
国立国会図書館や大学図書館のデータベースには、国内外の主要な学術雑誌が多数登録されています。また電子ジャーナルだけでなく紙媒体の学会誌も同時に検索できます。
さらにデジタル化された論文がヒットした場合、PCからそのまま本文を閲覧できる場合も少なくありません。
2-2.論文専門検索サイト(J-STAGE、Ciniiなど)
論文専門検索サイトでは、効率的に学会誌・学術誌を探すことができます。
例えば「J-STAGE(ジェイ・ステージ)」であれば、科学技術分野を中心とした国内の貴重な学術論文を網羅しています。「CiNii(サイニィ)」は日本の幅広いジャンルの学術論文や研究成果を、横断的に検索可能です。
分野に特化したデータベースもあり、例えば医学では「医中誌Web」や「PubMed(パブメド)」などがよく利用されます。
いずれもサービスごとに操作方法は異なりますが、検索などの基本操作はシンプルで、初心者にも使いやすく設計されています。PDFファイルをPCにダウンロードしておけば、何度でも細部までじっくり読み込むことができます。
論文検索サイトの種類については本ブログの別記事でも詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
参考記事:【論文の検索方法】最速で見つける! 14の主要データベースと6つの極意
2-3.大型または学術誌専門書店のオンラインサービス
書店が提供しているオンラインサービスも見逃せません。
紀伊國屋書店や丸善雄松堂などの大型書店では、店舗で学術誌のバックナンバーを取り扱うだけでなく、Webで研究者や学習者に向けたサービスやコンテンツを展開しています。その一環として、独自の文献プラットフォームや論文へのアクセスサービスを提供している例もあります。
さらに小規模でも、大学などの近くにある学術誌専門書店や、そのWebサイトを見てみましょう。新刊や古書を取り寄せるのに便利です。
▼参考サイト(外部リンク):
2-4.一般の検索エンジンでの検索(Google Scholarなど)
専門サービスだけでなく一般の検索エンジンでも検索できます。
中でも「Google Scholar(グーグル・スカラー)」は優れたGoogleの検索技術を元にした学術文献検索サービスです。一般のGoogleで検索するよりも信頼性の高い資料を見つけやすくなっています。
ただしノイズ情報がヒットする可能性は、先に挙げた論文専門検索サイトよりも高い可能性があります。検索結果は慎重にチェックしてください。
3.目的の学会誌がWebにない場合は? リアルで到達する2つの手段
それでは逆に、目当ての学会誌がWeb閲覧に対応していない場合はどうすれば良いのでしょうか。印刷版の学会誌を確認する方法を、以下に3つピックアップしました。
3-1.学会やジャーナルの発行機関へ問い合わせる
目的の学術誌や学会誌に到達する最も確実な手段は、発行機関へ直接問い合わせることです。
事務局や編集部に連絡すると、在庫状況や購入方法を教えてもらえることがあるでしょう。また最新号の目次や購入可能なバックナンバーのリスト等の情報を提供しているかどうかも直接尋ねることができます。
3-2.国立国会図書館や大学図書館に依頼してコピーを取り寄せる
Web上で学会誌が閲覧できない場合、図書館の利用は最も有力な選択肢です。
国立国会図書館では国内外の学会誌が閲覧できます。見たい資料を事前にオンラインで検索・予約しておくと、現地で迅速に手に取れるでしょう。
図書館の「遠隔複写サービス」に申し込めば、希望する論文のコピーを郵送で取り寄せられます。
4. 学会誌のWeb閲覧に関するよくある疑問
最後に学会誌のWeb閲覧や検索についての「よくある疑問」と、その回答を4つ紹介します。
4-1.学会誌をWeb閲覧する際のキーワード選定のコツを教えてください
先に紹介した4種類のサービスのいずれにおいても、迅速に目的の文献にたどり着くには、キーワード選定が重要です。
論文のタイトルや著者名がわかっている場合は、正確な表記で入力しましょう。また分野やトピックが不明確な場合は、複数の関連キーワードを組み合わせると結果を絞り込めます。
さらに特定の手法や理論、地域や年代を表す語句を組み合わせると、よりピンポイントで絞り込めます。一方であまり絞り過ぎると見逃しが生じる可能性もあります。
「最初は広く検索し、その後じょじょに条件を絞り込む」のがコツです。
4-2.Web版の学会誌にも著作権の問題はありますか?
オンラインの学会誌でも著作権の問題は存在します。
多くの学会誌は著作権で保護されており、全文コピーや無断再配布は禁じられています。ただしオープンアクセスの論文やクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスを適用している場合は、一定の条件下で自由に利用できます。
4-3.Webで閲覧した学会誌の論文を引用する際の記載方法は?
Webで閲覧した論文を引用する際は、印刷の論文と同様、著者名や発表年、タイトル、雑誌名、巻号などの正確な情報を記載します。
引用情報の記載については、以下の記事でも詳説しています。
参考記事:【参考文献の書き方】無知は罪 表記スタイル実例9選と注意点、英文あり
4-4.学会誌のWeb版を発行して収益を上げる方法はありますか?
学会誌のWeb公開で収益を上げる方法として、閲覧自体を有料化する方法があります。これには主に以下の2つのモデルがあります。
- 有料購読モデル(サブスクリプション):月額料金を支払うユーザーを対象に閲覧可能とする
- ペイパービュー(PPV):特定の論文やバックナンバーに個別に価格設定する
また特に海外では、オープンアクセスモデルで著者から掲載料(APC)を得るジャーナルもあります。このほか企業広告の掲載などを収益源とするケースもあります。
研究の効率化や深化のためにも学会誌・学術誌のWeb化は必須
学会誌のWeb閲覧について、基本的な知識や方法、よくある質問などを解説しました。
現代の研究者にとって、膨大な量の情報を効率的に収集することは必須です。その助けとなるのが、学会誌のWeb閲覧です。
自身の研究成果を普及・発展させるため、あるいは後輩世代がWebからインスピレーションを得て研究を深化するために、印刷版だけでなく学会誌のWeb公開をぜひ検討してください。
日本印刷出版では、J-STAGE掲載に関するご相談をお受けしております。
J-STAGE活用のメリットについて、もっと詳しく知りたい方は
こちらの資料もあわせてご利用ください。