「J-STAGEに論文を掲載したいけど、どれくらい料金がかかる?」
「海外の論文プラットフォームでは著者負担の掲載料が高騰しているらしい。J-STAGEは?」
J-STAGEは、日本の研究者にとって重要な学術情報のプラットフォームです。その掲載料金や公開までのプロセスはどのようになっているのでしょうか? この記事では、J-STAGEでの論文公開に関して、料金が発生するのかどうかを詳しく解説します。またオープンアクセス方式の違いや、アップロード支援サービスについてもまとめました。
▼この記事はこんな人におすすめ
- J-STAGEで論文を公開するにあたり、料金面での懸念点をクリアにしておきたい
- 論文をWebに掲載するときのプロセスや注意点を知りたい
※本文中の説明はすべて2024年4月現在の情報に基づきます。機能・画面仕様などは最新情報とは異なる可能性があります。正しい情報は必ずJ-STAGEで確認してください。
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1. J-STAGEの掲載料金
まずはJ-STAGEへの論文掲載に料金が発生するのかどうかについて説明しましょう。
1-1.J-STAGEでの論文公開には料金がかからない
J-STAGEは、日本国内外の研究者が無料で論文を掲載できます。
J-STAGEを運営している科学技術振興機構(JST)は文部科学省の管轄下にある機関で、研究者が自らの研究成果を広く公開するためのプラットフォームとして設計されています。
インターネット上で誰もが自由にアクセスして読めるという「オープンアクセス」モデルに基づいており、掲載・利用とも基本無料です。国内外の多くの研究者や学生に利用されています。
1-2.J-STAGEで追加費用が発生するケース
J-STAGEでは、論文掲載は基本的に無料ですが、追加費用が発生する場合もあります。その1つが「J-STAGE類似性チェックサービス」です。
これはJ-STAGEから論文登載誌の発行機関(=登載機関、一般的には「ジャーナルの編集部」などとも呼ぶこともあります)へ、剽窃チェックツール「iThenticate」を提供するものです。この機能を使うと、登載機関は投稿された論文に不適切な引用や盗用、二重投稿などがないかを確認できます。
有料オプションは、著者自身ではなく、登載機関が使う機能です。
外部リンク(PDF):J-STAGE 標準機能とオプション機能
1-3.「ハゲタカジャーナル」に注意
ちなみに論文誌の中には、「ハゲタカジャーナル(捕食的出版)」と呼ばれる悪質なものが存在することに注意してください。
ハゲタカジャーナルは、J-STAGEなどがオープンアクセスであることを悪用して著者から高額な掲載料を請求します。「すぐに公開できる」とうたって掲載を持ちかけながら、査読プロセスは不透明、または存在しない場合が少なくありません。学術的な信頼性は低いです。
論文の投稿先や掲載誌を決める際には、発行機関の評判や過去の出版実績をよく確認してください。
2. オープンアクセス方式の違いと公開メリット
続いてはJ-STAGEに論文を無料で公開できる背景と、公開するメリットについて説明しておきましょう。
2-1.オープンアクセス型論文プラットフォームの種類
オープンアクセス型論文プラットフォームには、以下のような主要な形態があります。
- グリーンオープンアクセス
研究者が自身のウェブサイトや機関のリポジトリに論文を無料でアーカイブする方式
- ゴールドオープンアクセス
出版時に論文がすぐに一般に無料で公開され、通常は著者が掲載料を支払う方式
- ダイヤモンドオープンアクセス
著者からの掲載料を徴収せず論文を無料で公開し、なおかつ出版コストが他の資金源で賄われている方式
特に海外では、ゴールドオープンアクセスのモデルで運営されているデータベースも多くあります。J-STAGEはこの中で、ダイヤモンドオープンアクセスに近い形式を採用しています。
2-2.J-STAGEに論文掲載するメリット
J-STAGEでの論文掲載には、複数のメリットがあります。代表的なものを紹介しましょう。
第一のメリットは、基本的に掲載料が無料であるため、研究者の経済的負担が軽減されることです。また、J-STAGEではDOI(デジタルオブジェクト識別子)を割り当てることで、掲載された論文が海外のユーザーにとっても読みやすく、引用しやすくなるのもメリットの1つです。
最低限のコストで、日本国内だけでなく国際的にも研究の影響力を大きく広げられます。
3.J-STAGEで論文を公開するまでのプロセス
続いてJ-STAGEで論文を公開するまでのプロセスについても説明しましょう。
3-1.論文掲載の申請から公開までの流れ
J-STAGEで論文が掲載されるまでのプロセスは、以下のようになります。
- 申請手続き:学会などの所属機関やジャーナル発行機関を通じ、必要な資料や見本誌提出を送付して新規登載の申請を行う
- 書類・データ準備:論文のPDFファイルや必要な書類、XML形式のメタデータなどを準備
- 審査:プロセス1.での提出物について、J-STAGEの審査を受ける
- 必要作業に対応:登載機関側で、公開にあたって必要な作業に対応する
- 公開:プロセス4.の設定により、論文がJ-STAGEに公開される
3-2.掲載誌のガイドラインに基づいた論文の提出(WordやPDF)
J-STAGEでの論文公開の前に、まずは掲載誌に指定されたスタイルガイドに従って、本文や図表を整えなければなりません。
見出しや本文など、定められたフォントサイズを守り、ページレイアウトを設定しましょう。図表や参考文献情報も推奨フォーマットに基づいて整理します。
登載機関への提出は、WordやPDF形式で指定されることが一般的でしょう。図表等は別途、所定の形式でまとめてください。
3-3.論文のデータフォーマット(XML)
さらにJ-STAGEに論文を公開する際には、論文データをXMLというマークアップ言語に変換する必要があります。
XML化はタイトル、著者名、所属、抄録、キーワードなどのメタデータを、コンピューターがミスなく認識するために必要な工程です。論文データは、XML化することによって初めて世界中のデバイスで正確に表示・利用されます。
専門的な知識を要するため、この工程を研究者本人が行うのはあまり現実的ではありません。登載機関から専門企業に依頼して対応するケースも多いでしょう。
3-4.掲載後の修正と撤回手続き
J-STAGEで論文が公開された後は、修正や撤回の手続きも可能です。
誤りを含む論文は、登載機関側で著者からの申請に基づいて撤回・修正対応します。撤回告知記事の作成や、元記事の編集・PDF差し替えの作業が発生します。
ただし一度公開した論文を、削除や非公開にすることはできません。これらの事項については以下のページでもチェック可能です。
外部リンク:J-STAGE登載機関向け よくあるご質問(日本語版)
4. 専門企業によるアップロードサービス活用
J-STAGEへの掲載を、専門企業に依頼することもあります。これにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
4-1.アップロードサービスの概要
論文公開の過程は複雑で、フォーマット整形やデータ変換、アップロードなどには手間がかかります。その「手間」に相当する部分の支援サービスを提供する企業があります。
アップロードサービスを活用すると、論文公開までの時間を圧縮して公開データの品質を保つことができるでしょう。
4-2.サービスを利用するメリット・デメリット
専門企業によるアップロードサービスを利用するメリットは以下の通りです。
- ワンストップの技術的支援
- 公開までのプロセスを迅速化
- 印刷業者の場合、論文集の印刷とデジタル化の一本化
一方、デメリットは以下の2点です。
- 金銭的コストの負担
- 詳しいアップロード方法を知る機会の損失
4-3.企業への依頼が向いているケース
論文のフォーマットやアップロードの作業に不慣れな人は、こうしたサービスを活用すると良いでしょう。技術的に自信がない、時間を研究や別の業務に割きたい人は、外注したほうが結果的にコスト削減につながるかもしれません。
また、大量の論文を扱う機関や、高度なフォーマット要求があるケースでも、プロの手を借りれば品質と効率が大幅に向上します。
研究成果の価値を最大化するには、アウトソーシングも有効な選択肢となるでしょう。
J-STAGE掲載に料金は不要 専門サービス利用も検討を
J-STAGEへの論文掲載について、料金を中心に、オープンアクセスモデルの違いや公開までのプロセスなどを解説しました。日本印刷出版でもJ-STAGEの掲載支援サービスを提供していますので、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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