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【ステップ&事例あり】J-STAGE活用法 学会誌・論文のオープンアクセス化とは?

「よく論文の『オープンアクセス化』について聞くが、どういう仕組みでどんな意味があるのか、あらためて知りたい」

「J-STAGEで学会誌をオープンアクセス化する具体的な方法は?」

そうした疑問や目標を持つ学会運営担当者や研究者へ向け、J-STAGEを利用した論文のオープンアクセスの基本から切り替えの具体的な手順、運用のコツまで、事例とステップをまじえて徹底解説します。

※本文中の説明はすべて2024年4月現在の情報に基づきます。

1. オープンアクセスの基本とそのメリット

まずはオープンアクセスの意味やフリーアクセスとの違いなど、押さえておきたい基本事項を説明しましょう。

1-1.オープンアクセスとは何か

オープンアクセス(以下OA)とは、研究者が執筆した査読付き論文を、誰もが無料で読めるようインターネット上に公開する仕組みのことです。

論文の再利用に関するルールを定めておくことで、適切な引用のもと、他者が研究成果を自由に活用できるようになります。

大学や研究機関だけでなく企業の研究者や政策立案者なども、研究結果を業務へ生かせるようになります。

1-2.オープンアクセスとフリーアクセスの違い

OAとフリーアクセスは「無料で閲覧できる」という点では同じです。しかし、再利用の許容範囲が異なる点に注意が必要です。

OAではあらかじめ著作物の再利用範囲が明示されており、自由な再利用が可能です。一方フリーアクセスは閲覧のみが無料で、再利用には許可が必要です。

1-3.論文のOA化に関する日本の公的な指針

日本全体でも、学術論文のOA化を推進する動きが見られます。

2024年2月、内閣府は「学術論文等の即時オープンアクセス実現に向けた基本方針」を策定しました。2025年から、科研費などの公的資金活用による研究成果は、学術雑誌に掲載後、即時に機関リポジトリなどで公開することが義務づけられます。オープンアクセスであることが前提です。

参考:内閣府・統合イノベーション戦略推進会議「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」

1-4.J-STAGEを活用して論文をオープンアクセス化する意義

J-STAGE(ジェイ・ステージ)は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営する、学会誌や論文のプラットフォームです。J-STAGEで論文をOA化すると、国内外に広く迅速にリーチできるようになり、領域の発展や社会への貢献につながります。

フリーアクセスでの論文公開も可能ですが、J-STAGEもOA化を推進しており、ジャーナルの発行機関に向け、「J-STAGE登載ジャーナルのためのオープンアクセスガイド」やセミナー資料を積極的に公開しています。

2. J-STAGEでオープンアクセス化を始める準備

それでは実際にオープンアクセス化するには、何から始めればよいのでしょうか。

2-1.学会誌・学術雑誌の新規登載前に、ポリシーを明確化

J-STAGEでOA化を始めるには、まずジャーナルもしくは論文単位でクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスを設定し、再利用範囲を明確にする必要があります。新規登載の申し込みが完了すれば、発行機関向けの管理画面上で登録が可能です。

なお国内外の研究者が論文を検索・引用するために必要な「DOI(デジタルオブジェクト識別子)」は、自動で付与されます。

2-2.完全オープンアクセス vs ハイブリッドモデル、どちらを選ぶべきか

ジャーナルの発行機関は、完全OAとするか、あるいはOAとフリーアクセスを共存するハイブリッドモデルにするか、最適なモデルを選ぶ必要があります。対象読者や学会の財政状況などに応じて検討するのが良いでしょう。

完全OAは全論文を無料で公開するため、広範なリーチと引用数の向上が期待できますが、収益の安定性が課題です。

一方ハイブリッドモデルは、購読料とAPCとの2つの柱を持ち、収益と公開範囲のバランスを取りやすい点が特徴です。ただし普及効果は完全OAよりも限定的で、編集・管理作業が煩雑になる可能性があります。

2-3.OA化対応に向け、決定すべき事項の一例

さらに具体的には、発行機関はジャーナルおよび論文について、以下のポイントなどを明らかにしておかなければなりません。

  • ジャーナル全体の収益モデル:APCの有無や金額設定のバランス
  • OAの対象範囲(全論文、特定分野など)
  • 著作権とCCライセンスの種類(BY、NC、ND、SAの条項より組み合わせを選択)
  • 二次利用の範囲に関する学会のポリシー
  • 投稿規程の改定
  • 査読フローの再検討
  • 早期公開のルール化
  • 過去の巻号や掲載論文の取り扱い

これらの事項は、既存の会員はもちろん、新規の論文投稿者に対してもわかりやすく示す必要があります。

3. オープンアクセス化と運用までの3ステップ

それでは実際にOA化を進めていくにはどのようにすれば良いのでしょうか。4つのステップを説明します。

3-1.【Step.1】J-STAGEへの新規掲載申し込み

J-STAGEへ新規でジャーナルを掲載する際は、審査基準などを事前に確認しておきましょう。申し込みの詳しい手順は、本ブログの以下の記事で詳しく解説しています。

参考:【J-STAGE】論文を無料公開する意義とは? 掲載の4ステップも解説

3-2.【Step.2】論文データのXML化

技術的な面では、論文データのXML形式への変換が必要となります。XMLの意味や作業のポイントなどについては、こちらの記事をチェックしてください。

参考:【初心者向け】J-STAGEの論文XMLとは? 基本フロー&ツール比較、作成効率化のヒントも

3-3.【Step.3】ジャーナルや論文ごとの公開設定

2-3で決定した方針にしたがって、発行機関向けの管理ページから、記事ごとに以下の項目を含めて公開設定を進めましょう。当ブログでは、編集登載画面のマニュアルも紹介しています。

  • 表示するCCライセンスの選択
  • 「オープンアクセス」の認証設定

参考:【編集搭載】J-STAGEマニュアル中学生にもわかる簡単8ステップ!

4.J-STAGEによる学会誌オープンアクセス化の事例紹介

最後に、実際にOA化で成果につなげた電気化学会の事例を紹介しましょう。

4-1.OA化への決断と準備:調査や体制整備

同学会の学術論文誌『Electrochemistry』は、1999年の創刊以来、会員向けに公開されてきました。2012年にJ-STAGEで電子ジャーナル化。その後編集委員会は2019年に会員に対して事前調査を実施し、2020年から具体的なOA化に着手しました。

まずは「フリーアクセスとOAとの趣旨の差」を理解するところから始まりました。さらに迅速な意思決定のため、編集長・副編集長に権限を集中させる体制に変更したといいます。

さらに「既存会員だけでなく論文投稿者への周知も重要」と認識し、手引き資料の改訂に取り組みました。

4-2.具体的な移行プロセスと施策

海外出版社の事例を参考に、投稿規程や著作権ポリシーを刷新。DOAJ(Directory of Open Access Journals=オープンアクセスジャーナルの国際ポータルサイト)への収録を見据えた改革を進めました。

その一環として、APCの定額化や、減免制度などを導入。こうした施策や編集経費の見直しにより、投稿から掲載までの工程の効率化を図りました。

3-3.OA化による成果

同学会のOA対応による主な成果は、投稿から掲載までの期間を「平均5週間」に短縮できたことであり、「投稿先候補として検討する研究者も増えた」と公表。J-STAGEをプラットフォームとして活用したことにより、運用コストの抑制にもつながっているとされています。

参考:科学技術振興機構(2023年2月20日)「J-STAGEニュース No.51

   電気化学会「Electrochemistryの改革について

まとめ:オープンアクセス化は、社会にも学会にも有益

論文や研究成果のOA化は、学術界や社会への論文の影響を促進するほか、学会運営者・発行機関にとっても有益です。電気化学会の事例はその好例といえます。

事前の調査・準備を徹底し、段階的に進めることで、編集作業の効率化と国際的な認知度拡大の両方を実現できます。J-STAGEの活用は、この目標達成への近道となるでしょう。

日本印刷出版では、J-STAGE掲載に関するご相談をお受けしております。

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