「J-STAGE Dateって何? J-STAGEとはどう違うの」
「論文はもちろだけど、実験や調査で得たデータの価値をもっと多くの人に知ってほしい」
「J-STAGE Data」を活用すれば、発表したデータ自体が今後の研究活動の可能性を広げます。本記事では、活用による4つのメリットや、国内学会の注目の活用事例を紹介。実際にJ-STAGE Dataを利用する際のフローや注意点もわかりやすく解説します。
※本文中の説明はすべて2024年12月現在の情報に基づきます。
1. J-STAGE Dataとは?基本情報とその役割
まずはJ-STAGE Dataがどのような機能を持っているのか、基本的な事項を押さえておきましょう。
1-1. J-STAGEとは?学術情報プラットフォームの概要
J-STAGEは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が提供する学術情報プラットフォームです。論文や学会誌などを国際基準にのっとった方式で公開し、研究者や一般読者に貴重な学術情報を提供しています。
1-2. J-STAGE Dataとは何か?データリポジトリの特徴と目的
J-STAGE Dataは、同じくJSTが提供する、研究データの保存・共有を目的としたデータリポジトリです。
論文から独立して実験結果や統計などのデータを中心に公開しており、他の研究者がそれを再利用しやすくしているのが特徴です。
1-3. J-STAGEとJ-STAGE Dataの違い
J-STAGEが論文や学会誌といったテキスト中心の情報を公開しているのに対し、J-STAGE Dataは、データに特化して保存・公開しています。
データだけで独自に流通するため、検索サイトなどを通じ、文献を探している研究者以外にも知られる可能性が高まります。「データから研究内容を知り、論文にも関心を持つ」というケースも期待できるでしょう。
2. J-STAGE Dataを利用する4つのメリット
それでは、研究者やジャーナルの発行機関がJ-STAGE Dataを利用すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。4つ紹介します。
2-1. 研究データの再利用促進
J-STAGEでは論文や記事、資料を基軸に、紙の論文よりも引用を容易にしています。論文の1つ1つに、DOI(デジタルオブジェクト識別子)が割り当てられ、検索・引用されやすい仕組みになっています。
同様にJ-STAGE Dataでは、論文のDOIとは別に、データに専用DOIが設定されます。論文と付随データが相互に参照できる形になるほか、データ単位でも引用や再利用が容易になります。
2-2. 別の研究者の実験・調査コスト削減
あるトピックについてデータを探している研究者が、検索により意図にかなうデータを得られれば、その分、データ探索や新たな調査・実験に関わるコストを大幅に削減できます。
データを作成した本人のみならず、学会やアカデミア全体の研究活動の効率化や発展にもつながるでしょう。
2-3. 異なる専門分野からの着目・活用機会創出
さらにJ-STAGE Dataでデータを公開すると、異なる分野や、研究者以外のユーザーからもデータが発見されやすくなります。
一例として、農作物の新たな栽培技術に関するデータが福祉分野の実務担当者に発見された結果、農福連携施策の構想につなげやすくなるなどの可能性があります。
共有したデータが、研究者本人や学会の想定を超え、別の視座や分析軸による新しい知見のヒントとなるかもしれません。
2-4. オープンサイエンス推進に貢献
J-STAGE Dataは、オープンサイエンスの理念を具現化するためのプラットフォームとして機能しています。オープンサイエンスとは「研究成果を社会全体で共有し、科学技術の発展を加速させる取り組み」のことです。
繰り返しになりますが、最新の研究データが一般ユーザーにもアクセス可能になることで、科学の前進や社会課題解決に一役買うことが考えられます。
3. 学会誌やジャーナル発行機関のための具体的活用方法
次に、学会やジャーナルの発行機関がJ-STAGE Dateをどのように活用できるかについて考えてみましょう。
3-1. J-STAGEへの掲載と同時にJ-STAGE Dateへ付随データを公開する
まずは基礎的な取り組みとして、J-STAGE上で公開する論文の背景データや分析結果を、同時にJ-STAGE Dataで公開する方法があります。
論文と関連データを同時に掲載・管理するので、それぞれのプロセスを別々に進めるのと比較して、手間やコストが省けるというメリットがあります。
3-2.長期的かつ効率的な研究データ管理
長期的かつ効率的な研究データ管理を目的として、信頼性の高いJ-STAGE Dateのリポジトリを利用するのも、価値ある選択となるでしょう。
例えばジャーナルの特集記事の企画で、特定のトピックに関する研究データを集約したいときにも便利です。各研究者の所属研究機関にバラバラにデータを保管していると、連絡や取り寄せだけで手間がかかりますが、J-STAGE Dateに一元化しておけば、効率的に作業が進められます。
4. J-STAGE Dataの利用手順と注意点
続いて、J-STAGE Dataの利用手順をステップごとに解説するとともに、注意点についても補足しましょう。
本文中で言及している資料はいずれも、J-STAGE Date公式サイトの「J-STAGE Data マニュアル(日本語版)」のページに公開されています。
4-1. J-STAGE Dataでの研究データ公開、3つのフロー
J-STAGE Dataでは、以下の3つのシナリオでのデータ登録を想定したフロー図を提供しています。著者・事務局・発行機関・査読者など、関係者の役割と必要な作業が手早く把握できる資料です。
- 著者が論文投稿と同時にデータを登録
- 論文受理後に著者がデータをを登録
- 論文受理後、発行機関がデータを登録
いずれの場合も、査読プロセスのためのプライベートリンク作成や、手動操作をうながす通知メールなどが組み込まれており、滞りなく進められるようシステムになっていることが分かります。
4-2. データ公開までの基本的な流れ
先のフローのうち最も一般的な1のシナリオに沿うと、データ公開までの手順は以下のようになります。
- 発行機関によるサービス利用申請
- 著者(=データ登録者)への利用アカウントの案内
- 推奨形式に沿ったデータ準備
- 当該データと付随データの作成・登録
- 発行機関によるデータの形式・内容確認
- 事務局がDOIを付与
- データ公開
各プロセスなどは公式資料を確認してみてください。
4-3. 利用する上での注意点
データの公開・共有にあたっては、いくつかの注意点があります。
まずはガイドラインで定められたデータの内容と対象範囲、形式を守る必要があります。
さらに公開データにはCC(クリエイティブ・コモンズ)ライセンスを付与し、利用条件を明確にしなければなりません。
公開後にデータの誤りが判明した場合は、著者および編集委員会の責任で修正版のアップロードが必要であることなどです。
5. J-STAGE Dataを活用する国内の学会 2つの事例
最後に、J-STAGE Dataを活用している2つの学会の事例を紹介します。
5-1. 日本気象学会
日本気象学会の英文誌『Journal of the Meteorological Society of Japan(気象集誌)』は、J-STAGE Dataに研究データを公開しています。
気象学の分野はデータ容量が大きく、データ共有が重要とされているため、早期からこの仕組みを導入しました。
同学会は、データ共有の重要性や利用手順を示したわかりやすいパンフレットやガイドラインを作成し、論文投稿者に対してもデータ公開を検討しやすい環境を用意しています。
参考:日本気象学会「気象集誌」におけるJ-STAGE Dataの利用の取り組み(2021)
5-2. 日本森林学会
日本森林学会が発行する『日本森林学会誌』は、研究データ公開を奨励し、その方針を「投稿案内」に詳しく記載しています。
データ公開のメリットや対象となるデータ、具体的な投稿方法など、投稿者でも利用方法を理解できるようになっています。
またWebサイトを通じて周知を図ることで、この分野の発展と学術的な交流の促進に貢献しています。
まとめ:論文だけでなくデータが興味喚起を主導する時代
研究データの公開は、論文だけでは伝えきれない、新たな発見や視点を世の中に提供します。
J-STAGE Dataの活用を通じて、学会やジャーナルの枠を超えた科学技術の発展に貢献できます。これからは、データがきっかけとなって興味を喚起し、さらなるイノベーションを生み出す時代といっても過言ではないでしょう。
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