「論文を公開するなら、J-STAGEとCiNiiどっちがいい?」
この記事では、J-STAGEとCiNiiの機能と特徴、その違いを徹底解説します。分野別の強みや独自機能を比較し、文献探索ツールとしての使い方から論文公開プラットフォームとしての活用法まで、研究活動を支える両者の違いを明らかにしていきます。
▼この記事はこんな人におすすめ
- J-STAGEとCiNiiの違いや使い分け方を知り、研究活動に生かしたい
- 学術雑誌や論文の公開先にJ-STAGEを追加したい、もしくはCiniiから移行したい
※本文中の説明はすべて2024年7月現在の情報に基づきます。機能・画面仕様などは最新情報とは異なる可能性があります。正しい情報は必ずJ-STAGEで確認してください。
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1. J-STAGEとCiNiiの違い
まずはJ-STAGEとCiNiiについて、その概要を簡単に紹介します。
1-1.J-STAGEの概要と特徴
「J-STAGE(ジェイ・ステージ)」は、科学技術振興機構(JST)が運営する電子ジャーナルプラットフォームです。
日本のさまざまな学会が発行する学会誌や学術雑誌を中心に、幅広い分野の文献を収録しています。論文の全文公開や早期公開機能を備え、研究成果の国際的な普及に役立てられています。
1-2.CiNiiの概要と特徴
「CiNii(サイニィ)」あるいは「Cinii Research」は国立情報学研究所(NII)が提供する学術情報データベースで、国内の多様な学問の文献情報を網羅的に集約しているのが特徴です。
大学図書館の蔵書情報を扱う「CiNii Books(サイニィ・ブックス)」と、博士論文に特化した「CiNii Dissertations(サイニィ・ディザテーション)」というサービスが含まれますが、これらも2025年中をめどに、ここへ機能集約される予定です。
2.J-STAGEとCiNiiの検索機能比較
続いてJ-STAGEとCiNiiを、検索機能の面から比較してみましょう。
2-1.J-STAGEの検索方法
J-STAGEでは、キーワード検索に加え、詳細検索機能を利用できます。
著者名、資料種別、発行年など資料の基本情報のほか、分野別や、査読の有無、記事属性(新着・早期公開・電子付録など)での絞り込みにも対応。
全文PDFの横断検索機能により、本文の内容を起点に関連文献を探せるのも特色といえるでしょう。
2-2.CiNiiの検索方法
CiNiiでも、フリーワード検索、人物・団体名、所属機関、データソース種別などで検索可能です。
機関リポジトリ(大学などが研究成果を無料公開するオンライン保管庫)との連携も特徴の1つで、リンクによって外部データベースへアクセスできる仕組みになっています。
2-3.検索結果のフィルタリングとソート機能
J-STAGEとCiNiiは、いずれも検索結果のフィルタリングとソート機能を備えています。
J-STAGEでは絞り込み項目に、記事の「ライセンス(公開や利用の範囲)」や「認証(フリー・オープンアクセス・認証あり)」といったものがあります。また資料の「発行日」と「公開日」を別々にソートできるなど、電子出版データの取り扱いに特化した機能に強みがあるといえるでしょう。
一方CiNiiでは、言語種別での絞り込みと「被引用回数によるソート」に対応しています。影響力の高い資料から優先表示がされるのは、効率的な文献探索を目指す研究者にとって、有用な機能ではないでしょうか。
2-4.検索機能の使い勝手とユーザビリティ
J-STAGEとCiNiiは、どちらもシンプルな検索インターフェースを提供しています。
いずれもTOPから直感的な操作できます。中でもJ-STAGEは全文PDFの横断検索が特徴的です。検索で把握可能な情報の深度の点でいえば、J-STAGEが優れているでしょう。一方CiNiiは、書誌情報や博士論文など複数のデータベースを統合的に扱える点と、研究者や機関ごとの業績一覧表示が便利です。
3.データベース収録範囲の比較
では2つのデータベースが取り扱う文献の範囲には、どのような違いがあるのでしょうか。
3-1.J-STAGEの収録範囲と対象分野
J-STAGEは特に科学技術分野に強いとされており、学会誌や学術雑誌の掲載論文や研究データが豊富にそろっています。
一部の資料は早期公開システムを通じて、最新の研究成果にアクセスできます。
3-2.CiNiiの収録範囲と対象分野
CiNiiは書誌情報・博士論文、大学紀要などを含む幅広い学術情報を収録しています。分野は人文・社会科学から自然科学まで、多岐にわたります。
ただしJ-STAGEが全文提供の電子ジャーナルプラットフォームであるのに対し、CiNiiは論文の情報が中心であることに注意してください。詳細な内容にまですぐにアクセスできるとは限りません。
CiNiiで発見した論文の本文を閲覧するには、機関リポジトリや出版社のサイトなどの外部リンクを経由する必要があります。
3-3.収録論文数と情報の新しさ
どちらのプラットフォームも収録論文数は常に変動していますが、一般的にはCiNiiの方が多いとされています。なぜならCiNiiが学術雑誌以外の本や博士論文なども対象にしているためです。
両者とも頻繁に論文やデータが追加されているため、ユーザーは常に最新の研究成果を入手できます。
「CiNiiで幅広く文献を探索し、その後J-STAGEで全文を閲覧する」という使い分けもよく用いられます。
4. CiNiiからJ-STAGEへの移行手続き
最後に、論文や研究成果の掲載先として、CiNiiからJ-STAGEへ移行する際に検討しておくべき事項をまとめました。
4-1.データ移行の準備と注意点
CiNiiからJ-STAGEへのデータ移行には、事前準備が必要です。
まずは移行対象の論文データを整理してください。メタデータの形式をJ-STAGEの要件に合わせなくてはなりません。PDF形式での全文データ準備や、著作権・公開範囲などの設定も不可欠です。
また例えば、最新5年分から順次移行していくなど、段階的な進行が現実的でしょう。さらに移行後のデータ検証も計画に含んでおくのがおすすめです。
参考記事:【初心者向け】J-STAGEの論文XMLとは? 基本フロー&ツール比較、作成効率化のヒントも
4-2.移行手続きの具体的な作業フロー
論文や資料の掲載先をCiNiiからJ-STAGEへ移行する場合、一例として、以下のような作業フローが発生します。
- 学術雑誌・論文集の発行機関からJ-STAGEへの新規登載申請
- 移行データの選定と整理、スケジューリング
- 論文のXMLデータ化
- PDF形式の論文全文データ準備
- J-STAGEの審査・承認後、J-STAGEの登載システムへのデータアップロード
- メタデータと全文データの紐付け確認
- 表示テストと校正
- 公開設定の調整(アクセス権、早期公開など)
- 関係者・読者への告知
J-STAGEへ論文や学術雑誌を初めて登載する方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
参考記事:【J-STAGE】論文を無料公開する意義とは? 掲載の4ステップも解説
まとめ:CiNiiからJ-STAGEへの移行は専門業者に相談を
移行に関して不明点がある、あまり時間をかけたくないなどの場合は、J-STAGEへの掲載サポートを専門に行っている業者に相談してみるのもよいでしょう。
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