「キーワードで論文検索するとたくさんヒットするけど、本当に自分の研究テーマに関連するのはどれ…?」
「図書館に出向く前に、オンラインで確認できる論文をざっと調べておきたい」
そんな人へ向けて、この記事では、論文の探し方や検索方法について徹底解説します。論文検索が可能な14種類のプラットフォームを紹介し、それぞれの特徴を説明するほか、図書館の利用についても説明します。また最後には、目当ての論文を効率的に探し出すポイントを付記しました。
論文を探し始める前に、まずは入門ガイドとして一読してみませんか。
▼この記事はこんな人におすすめ
・初めて文献探索、論文検索をする
・参考になる論文を、漏れなく探し出したい
・見つけるのに時間がかかるので、検索のポイントを押さえて効率化したい
▼ J-STAGEのメリットについて、詳しく知りたい方はこちら ▼
1. 論文を探す方法
まずは論文を探す3つの基本的な方法について知っておきましょう。
方法1.論文検索データベースを利用する
論文検索データベースは、研究者や学生にとって最も効率的な調査手段の1つです。。
幅広い学術分野にわたる膨大な数の論文をカバーしており、特定のトピックやキーワードで検索することが可能です。代表的なデータベースには、例えば、CiNii、Google Scholar、J-STAGEなどがあります。
キーワード検索に加え、著者名、出版年、書誌名などで絞り込めるものもあります。これらを使いこなせるようになると、研究の効率は格段に上がります。
方法2.図書館の書籍・学術雑誌から調べる
専門書籍や学術雑誌も、必ず当たっておきたい情報源です。
大学図書館、国立国会図書館はもちろん、内容によっては地域の図書館で見つかることもあるでしょう。ちなみに国立国会図書館は、東京本館を東京都千代田区永田町に、関西本館を京都府相楽郡精華町に設けています。
さらに物理的な資料探索には、オンラインでは得られない副次的メリットもあります。本棚で出会った別の書籍が、偶然研究のヒントにつながる可能性も見逃せません。またデジタルとは異なる読書体験が、インスピレーションをもたらすこともあります。
方法3.論文の参考文献リストから探す
1つでも興味のある論文を見つけたら、参考文献リストには必ず目を通してください。関連文献を探すための重要な手がかりです。
加えて類似テーマの複数の論文を読み込んで、それらの共通点や傾向、差分を把握することも重要です。「未解決の課題」や「不足している視点」といった、重要なポイントを発見できるかもしれません。
2. 主な論文プラットフォーム・検索データベース
続いては国内外の論文データベースやプラットフォームを、全部で14種類紹介します。
日本語対応のものは★印で示しました(文中リンクは日本語版を優先)。
① CiNii(サイニィ) ★
「CiNii」は、日本の学術論文に特化したデータベースの1つです。
運営は国立情報学研究所(NII)。国内の学術雑誌、博士論文、研究プロジェクトの成果などを幅広くカバーしています。特に日本語での論文検索には強みがあり、国内研究の調査には欠かせません。
CiNiiは論文がどの雑誌に掲載されたか、どの図書館に所蔵されているかといった情報も網羅しています。オープンアクセス論文も多く、無料で閲覧できる資料も豊富です。
② Google Scholar(グーグル・スカラー) ★
「Google Scholar」は、米・グーグル社が提供する無料サービスです。世界中の文献を検索できます。
Googleならではの使いやすさで、論文、書籍、学術雑誌の記事など多岐にわたる情報にアクセス可能です。キーワード、著者名、出版年などから、関連論文を迅速に見つけられます。
また「論文がどれだけ引用されているか」を示す「被引用数」も、影響度を測る一助となります。国際的な研究動向を追うのにも有効なツールです。
③ J-STAGE(ジェイ・ステージ) ★
「J-STAGE」は、日本の科学技術情報を集約した、電子ジャーナルプラットフォームです。
運営は文部科学省所轄の「国立研究開発法人 科学技術振興機構」で、理工学、医学、農学、社会科学など、科学技術を中心に多様なジャンルをカバー。国内の学術雑誌、会議録、研究報告書などを公開しており、英語論文も多数含まれています。
他のデータベースからのリンクも多く、ここへ登録すると検索者の目に留まる機会が増えることは間違いありません。
④ 学術機関リポジトリデータベース(IRDB) ★
「学術機関リポジトリデータベース(IRDB)」は、日本国内の大学・研究機関が運営する学術リポジトリに登録されたコンテンツのメタデータを集約しています。
元は「JAIRO」という名称で利用されていた学術情報の検索サービスも、2019年にこちらに統合されました。
IRDBは特に日本の研究成果に焦点を当てており、国内トレンドを探るのに有用です。
⑤ PubMed (パブメド)
「PubMed」は、生命科学と医学分野に特化した無料検索エンジンです。主に米・国立医学図書館(NLM)が提供するMEDLINE(メドライン)データベースにアクセスします。
世界中の5,200誌以上の医学雑誌に掲載された、医学、生物学、バイオテクノロジー、心理学などの数百万件の論文抄録と文献情報を包括します。
医師や医療研究者、医学・生命科学の学生などにとっては不可欠なツールといえるでしょう。
⑥ PubMed Central (パブメド・セントラル、PMC)
「PubMed Central(PMC)」は、米・国立衛生研究所(NIH)が、オープンアクセス形式かつフルテキストで、生命科学と医学分野の論文を提供する無料デジタルアーカイブです。
ここに含まれる論文情報はPubMedでも検索可能ですが、PMCは全文アクセスに特化しています。
⑦ Web of Science(ウェブ・オブ・サイエンス) ★
「Web of Science」は、世界中の学術論文を網羅する包括的な引用索引データベース。
自然科学、社会科学、人文科学などの論文が収録されており、論文の引用関係を追跡することで、研究の影響度や学術的ネットワークを可視化しています。その研究テーマの発展プロセスや、現在の位置づけを理解するための大きなヒントとなります。
英米系の情報サービス企業・クラリヴェイト社が提供しています。
⑧ Scopus(スコーパス)
「Scopus」は、世界の自然科学、技術、医学、社会科学、芸術および人文科学などの論文を網羅しています。
引用関係のデータから学術研究の影響力やトレンドが分かるほか、ジャーナルのインパクトファクターなど、研究の質を測る指標も充実しており、国際的な動向を追うのに最適です。
世界最大規模の学術出版社、蘭・エルゼビア社が提供しています。
⑨ IEEE Xplore(アイ・トリプル・イー・エクスプロア)
「IEEE Xplore」は、電気工学、コンピュータサイエンス、電子工学など技術分野に特化したデジタルライブラリで、世界中の研究者やエンジニアに広く利用されています。
IEEE(米・電気電子学会)およびIEE(英・電気技術者協会)が学術論文、会議録、標準規格、電子書籍などを提供しています。
⑩ CAS SciFinderⁿ (サイファインダー・エヌ)
「CAS SciFinderⁿ」は、化学およびその関連分野の包括的データベースです。
ここで提供されている、化学物質、化学反応、文献情報、研究データなどは、化学・生物・薬学などの研究者にとっては欠かせません。化学物質構造や化学反応式から検索できるのも特徴です。
特許や市場調査のデータも含まれており、産業界の研究開発にも役立ちます。
⑪ ERIC (エデュケーション・リソーシズ・インフォメーション・センター)
「ERIC」は教育関連資料の総合データベースで、学術論文、研究報告書、政策文書、教育教材などを含む数十万件の文献を収録しています。
米・教育省の支援を受けて運営されています。
⑫ PsycINFO(サイコインフォ)
「PsycINFO」は、心理学および関連する行動科学分野の文献を網羅。
心理学者、カウンセラー、教育関係者、医療専門家などにとって、心理学研究の質を高めるための重要な情報源となっています。
⑬ arXiv(アーカイヴ)
「arXiv」は、物理学、数学、コンピュータサイエンス、量子生物学、統計学などの分野に特化したプレプリントサーバーです。
「プレプリントサーバー」とは、査読前の研究論文を素早く公開し、学術コミュニティ内での早期の情報共有を促進する新たな仕組みのことです。
⑭ SSRN (ソーシャル・サイエンス・リサーチ・ネットワーク)
「SSRN」は、社会科学分野のプレプリントサーバーで、経済学、法学、企業経営、社会学などの研究論文を提供。
arXiv同様の目的で査読前論文を公開し、社会科学研究の進展に貢献しています。
3.検索で目当ての論文にたどり着くの6つのコツ
最後に論文検索のコツについてまとめました。
1.正確なキーワードを選定
2.著者名、出版年など高度な検索機能の利用
3.参考文献リストを徹底活用
4.複数データベースの利用
5.オープンアクセス資料の活用
6.論文の要約や抄録からの内容推測
文献探索にぜひ役立ててください。
日本印刷出版では、J-STAGE掲載に関するご相談をお受けしております。
J-STAGE活用のメリットについて、もっと詳しく知りたい方は
こちらの資料もあわせてご利用ください。